鈴川優希 詰パラ入選作 #21-25

入選21回 短大 2012.3

詰将棋パラダイス2012年3月号 短期大学

ABC平均
281016502.76

岩○茂 25飛の誘手が強力。31香合の変化にも悩まされた。2度の角合が正解とは旨くできている。

野○賢治 忽然として2回も現れた12角に唸る。


初手25飛は24桂左の移動合と決まり、これが作意っぽいが詰まない。正解は22歩~41飛成で合駒をせびってから、25龍でもう1枚合駒をせびる順。
その合駒が問題だが、いずれ12玉型から13○、同玉、25桂となったときに持駒金2を避けなければならない。ということで、2枚の合駒は頭が丸い角とし、13○=金となるように受けるというもの。

簡単には書くが、実際は31香合や24桂移動合の変化も絡んできて難しく、正解率は30%台となってしまった。

作り方に関して言えば、後半が無仕掛図式のきれいな手順にまとまっているので、25桂や46香まで置いてこんなに難しい合駒問題にする必要はなかったと思われる。ただ、後半だけでは新作と言えるかどうか微妙なので、いかんともしがたい。

入選22回 表紙 2012.4

詰将棋パラダイス2012年4月号 表紙

解答数
1371361

太○岡甫 盤上に駒を増やしてからの捨駒ラッシュ。綺麗な作品です。

竹○健一 いつの間にか角が馬に! うまい!

変寝夢 曲尺が一回り小さくなったわけですね。


これはとてもよくできている表紙作品。
積み崩しで、初形と最終形の対比ということになれば、みんな大好きだろう。

入選23回 中学校 2012.5

詰将棋パラダイス2012年5月号 中学校

ABC平均
3101041012.89

掛○伸一 23飛成から25龍と盤上を大きく使う飛車の動きがすごい!

田○悠一 難問。初形から35馬が邪魔駒とは! 龍を取るぞとみせての龍取らせ、感動した。


初の半期賞受賞作。

83香合に対して14龍を回収できるよう、23飛成と限定移動する。75玉には25龍で、狙いをつけた龍に逆に取られてしまうのがパラドキシカルな狙い。初形ではと金と馬が5段目にいるので、この構想を見えにくくするのに一役買っている。

なお発表時は配置が1枚多かったが、とある有名作家からの指摘で減らせることに気づいた。上の図は改良後のもの。

入選24回 大学院 2012.7

詰将棋パラダイス2012年7月号 大学院
(摩利支天氏との合作)

「魔導研究所」

ABC平均
3820602.76

俊哉 魔導の中でも物質変換術の教室か。手順も変化に備えた17角限定引きや、46手目から12手かけて持駒を香⇒桂に替えるあたりまで見どころ十分。

凡骨生 3度の25角打に対する合駒が皆違う。面白い!


せっかくの長編なのでしっかりと解説していこう。なお、発表図は序がさらに4手逆算されていたが、不要と判断したので削って配置をきれいにしてある。

まずは11手目までサラサラ進み、ここで最初の合駒読みが発生する。

桂が売り切れなので香・銀・角のどれかだが、銀・角は同角、52玉、51桂成、同玉に42に打ち込んで清算する筋で早い。よって44香合に決定。
同角、52玉に、いったん42桂成と空成りで飛筋を通しておく。同香、53香、43玉に、17角の最遠移動が変化伏線の好手!

どうして26角ではダメなのかは後で解説するとして、2回目の合駒を考えよう。とは言っても桂合は取って45桂~54飛があるし、銀合は強すぎて取って42飛成くらいでなんとかなる。よって角合。
同飛、53玉、43飛成、同玉、25角で3回目の合駒読みとなる。

34桂合がそれっぽいのでこれを考えると、同角、33玉に25桂が打てて、22玉、23角成、同玉、33飛成、14玉、13桂成、25玉、35龍で……。

お分かりいただけただろうか。17角型でないとこの変化が詰まないのだ! うっかり26角とした誤解者は1名だった。

ともかく、34桂合は変化順であったことが分ったので、他の合駒を考える。

ぱっと見で安いのは香合。同角、33玉、43角成、同玉、45香、52玉、42香成、同玉と進むのでいかにも作意っぽいが、ここにも罠がある。
実は34銀合が正解。同角~43角成で、44銀と押さえ53銀成~42成銀という進行になれば、香合の手順に合流するがこちらのほうが2手長くなっているのだ。別詰がありそうだが、ない。金駒を渡すのは手の流れからも意外性があり、ここでは3名の誤解者が出た。

42成銀、同玉に45香と打ってずいぶんすっきりした形。ここから後半戦の始まりだ。

基本的には桂合か角合しかないが、43か44かも考えなければならない。
まず43桂合は同香成、同玉に55桂が打てるので、52玉に53角成の飛び込みがあって詰んでいる。44桂合でも、取って43香成と成り捨てれば同じことだ。そう、これ以降は、攻方に桂が渡ると常にこの筋が生じて詰ますことができる。言い換えれば、攻方はいかにして桂を入手しこの収束に持ち込むかという問題になっているのだ。

というわけでここでは桂を渡さない43角合が本線で、同香成、同玉、25角で次の合駒読みになる。

とはいえ桂を渡せないので34香合しかない。同角、33玉、43角成、同玉、45香でまた合駒。

やはり桂が渡せないので44角合。同香、52玉に再三の25角!

これで玉方はとうとう参っている。34に中合が必要だが、香合としてしまうと同角、51玉に53香があっていけない。ついに、桂を入手できる時が来た。

34桂合を取って、42香成~43角成と捨てて局面を元に戻してやれば、予習済みの収束が待っている。

全体を通して7回の合駒が登場し、そのどれもが複雑なわけではなく、1つ決まったらまた次、というようにテンポよく進行していく。持駒変換の味も引き出せた。限られたスペースの中でよく手が続き、上出来と言えるだろう。

もとはブログに発表した短編に摩利支天氏が発展のヒントを与えてくれたおかげで、魔法のように合駒が次々出てきて、ここまで逆算できた。鈴川は当時まだ中学生だったが、「合駒は念じれば出る」を体験できたのはこれが初めてのことで、大きな刺激となった。

そんな思いもあって、タイトルは「魔導研究所」。元ネタはファイナルファンタジーというゲームからだが、内容は実はまったく知らず、言葉のパワーだけで決めたもの。若々しい命名だが、名前負けしているとはあまり思っていない。

入選25回 小学校 2012.7

詰将棋パラダイス2012年7月号 小学校

ABC平均
101014222.68

斉○良則 何というか上手いの一言。

千○等 大駒の大立ち回り見事。


よくある転換の構図なのだが、最後の馬も捨駒になっているのがアピールポイント。無駄駒なくすっきりまとまっていていいと思う。紛れは少ないが、きれいにできていればそれでいい。

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