鈴川優希 詰パラ入選作 #26-30

入選26回 大学 2012.8

詰将棋パラダイス2012年8月号 大学

ABC平均
15615202.88

飯○晃 この初形から37飛を実現させ破綻なくまとめる才能がうらやましい。37飛の意味を変化に隠してしまう歩桂合が渋い応手。

奥○羽生 指棋強豪のような読みの深い手を、詰棋強豪がセンス良くまとめた、の感。 37飛に玄妙な味わいあり。


2手目同龍の変化。

余詰もなく、駒余りもない13手詰になる。暗算で簡単に解けて気持ちいいのでぜひ。よーい、はじめ。解答は後述する。

作意は、途中無仕掛になりそうでならず、5手目の局面。

これが本局の主眼手で、中途半端な位置に限定打となる。
34合には22角、24玉に23金という手があって詰むので、35→34の二段合が必要だ。34合は、作意を並べてもらえれば桂合が最善だと分かるが、35のほうは歩か桂か。
結論を言うと、35桂合にはすぐ22角、34玉に24金と捨てるのが好手で、同玉は36桂だし、45玉には36金、56玉、68桂で捕まっている。この変化のために37飛が限定打で、遠すぎても近すぎてもいけない。

飛を近づける意味で他に36合もないことはないのだが、解説しても特に面白くないのでここでは省略する。ともかく、35歩合→34桂合が最善。

作意で数手後に出てくる26桂がなかなかの好手で、合駒の桂を跳ねさせ収束に向かう。

限定打と二段合の箇所が少々難解で、正解率が半分を割ってしまったが、まとまりとしてはいい感じの中編だと思う。


最後に、2手目の変化の答えを。33金、14玉、24金、同玉、34金、14玉、24金、同玉、36桂、23玉、14角、同玉、34飛成迄。

もともとこの手順を作意にしていたのだが、32の飛を取られる流れのほうが面白くなりそうだったので、正算でなんとか頑張った、というのが創作背景になっている。

入選27回 小学校 2012.9

詰将棋パラダイス2012年9月号 小学校

ABC平均
01557862.35

田○悠一 龍馬の塊が消えて詰上り、すっきり。

小林巧 泰山鳴動して鼠一匹。


ソッポをやってみたかっただけだが、紛れもないのでちょっと物足りない感がある。

入選28回 高校 2012.9

詰将棋パラダイス2012年9月号 高等学校

ABC平均
48423262.45

原○雄二 71角成には参りました。4手目12玉と逃げられた時に龍筋を通しておく必要があるわけですね。

山○勇 53角成で余詰かと思ったら、54歩合があった。


これもソッポ。わりと目新しい意味付けでなかなかインパクトがあって、収束も龍捨てでよくできていると思う。
双玉は、9手目44龍の紛れが強力だったので、43角合で逃れるために置いている。他の解決策もありそうだが、6筋より左に駒を置く必要があったので、初手の価値が半減すると判断した。

なお発表図は、持駒が香2で、7手目43香から歩合を稼ぐ17手詰だったが、ダレていると判断して今回の15手に変更した。

入選29回 中学校 2012.10

詰将棋パラダイス2012年10月号 中学校

ABC平均
38505342.42

北○正一 要するに歩が欲しかったということなのだが、25角はかなりやりにくかった。

須○卓二 変化紛れは適度にあるし狙いもしっかりしている。収束もズバッと決まる。


持駒変換が狙いだが、あまり短編向けのテーマではないし、14桂の配置もみっともないので、成功している感じではない。

ただ、どこかの会合に出た時に、「鈴川さんのあの作品好きなんですよ~」と言われ、解答者にとってはそういうこともあるもんだなあと思い、記憶に残っている。

入選30回 短大 2012.11

詰将棋パラダイス2012年11月号 短期大学

ABC平均
72314512.65

凡骨生 初手に馬を動かして苦吟し次に4筋の香連打を考えこれまた苦渋。最後に歩を打って漸く解を見つけました。香成積み木が見事です。

永○勝利 確かに初形を見てうんざりしたが、解いてみたらうっとりだった。


分類上は「連置き趣向」。
後半はなかなかに面白く、詰上りからの逆算で作ったのだが、よくできていると思う。
ただ序盤が難解すぎて、馬の開王手をすると45桂跳とか45銀とかの移動合で逃れる紛れも多く、まあ趣向詰と分かっていなければ誰も解きたくないような仕上がりになってしまった。
が、配置を増やさずにこの序が逆算できているのも事実なので、当時はそれを放棄する気にもならず、というところ。

一般的に詰将棋の評価基準として、「形」と「手順」の2軸で考えがちだが、ここにいわゆる「レベルデザイン」(≒ユーザー体験のクオリティ)の要素も考慮して創作ができると、解答者に愛される作家になれるのだろう。
言ってしまえば「形」と「手順」は、論理的思考力があって柿木の使い方が適切なら、誰でもある程度のレベルには到達できる時代になっているから。

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